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天杉太郎のアマチュア樹木の基礎講座 その5

 みなさん、こんにちは。天杉太郎です。

 つゆ入りしました。草木がもっとも成長するときです。天杉観察には不向きな季節ですが、天杉の勇壮な姿が一番見事なときです。生い茂った藪の中から見つけたその姿はそれはそれは見事なものです。

 今回は「スギのぼうぼう萌芽」と題して、「アマチュア樹木の基礎講座 その5」をお送りします。
 「スギのぼうぼう萌芽」??。次の写真を見てください。
  ぼうぼう萌芽

 「スギのぼうぼう萌芽」です。
 今年5月、ササラ沢支流フナオチ沢出会いにあるスギ巨木の調査に入ったときの様子です。

     フナオチ沢の大杉

 胸高直径が6m以上ある立派な天スギでした。その格好良い姿もさることながら、地面から1mくらいの主幹より噴き出しているかの様な萌芽枝には驚きました。ざっと数えても20本以上はあります。

 「スギのぼうぼう萌芽」を見て頂いたので、本題「スギの萌芽について」に入っていくことにしましょう。ここでみなさんにお願いが。本題に入る前に「アマチュア樹木の基礎講座 その3」をもう一度見て「萌芽・ひこばえ・胴吹き」とはなんだったか、思い返しておいて頂きたいのです。

 萌芽に関する資料を読んでいると、スギは萌芽力が強い樹木であると記述されています。しかし、三川の天スギを中心に多くの天スギを見てきたわたしには、この記述に対して???といつも思って来ました。この???が今回のブログのテーマでもあるのです。

 萌芽=ひこばえと呼ぶとして、ひこばえと言えば薪炭林でコナラなどの樹木の切り株からひこばえが出て、株立ちとして成長して行く様子をイメージします。が、スギ植林地の伐採後切り株からスギのひこばえが出ていることは極めてまれです。アマチュア樹木の基礎講座 その3で紹介できたスギの切り株からのひこばえ写真は本当に稀なことで、ようやく明石さんのお蔭で探し得たといったものなのです。断定は表現は使えませんが、アマチュアの立場からは、スギはひこばえの出にくい樹木であると思います。

 しかし、萌芽=萌芽枝=胴吹きとなると話は大きく違ってきます。
スギの植林地ではまれですが、天スギの林では、スギの主幹のいたるところに、いたるところから萌芽枝=胴吹きが多く見られます。雪の多い生育環境の悪いところほどこの萌芽枝=胴吹きが多いと思います。今回最初に見ていただいた「スギのぼうぼう萌芽」です。


 今まで述べてきましたように、萌芽の言葉の定義、萌芽=ひこばえ or 萌芽=胴吹き によって、スギは萌芽力の弱い樹木であるとも言えるし、強い樹木であるとも言えるのです。
萌芽の言葉の定義違い、強いて言えばひこばえと胴吹きの違いはなんなのか?単なる萌芽枝の出る場所の違いなのか?答えがなかなか見つかりませんでした。


 いろいろ勉強してくると、つぎのようなことが言えそうです。

 樹木の芽には樹木のルール通りに出てくる定芽とルール通りに出てこない不定芽があります。これら芽の違いは、その樹幹の断面を見ると芽の痕跡が幹の中心まで伸びているか、伸びていないかで判断できます。定芽は幹の中心まで伸びており、不定芽は伸びていません。

 定芽の中には正常な形で芽が作られたものの、それ以上発達せず樹皮の表面かその直下にとどまっているものがあります。これを休眠芽と言い、ある樹種では三分の二が春になっても休眠芽のまま残っているそうです。この休眠芽もこのまま眠り続け樹木が枝が成長して太くなってしまうと埋もれてさらに潜伏芽となります。

 そして、樹木の枝や幹が折れたり伐採されたときに、前述した休眠芽や潜伏芽が覚醒して不定芽として出てくるのです。

 しかし、スギの様な針葉樹の場合、前述の定芽で休眠芽となるような芽はないか、極めて少ないため、樹幹の中には休眠芽や潜伏芽はほとんどないそうです。

 こうした「スギの葉芽」については、ここでの詳細な説明は省かせてもらいますが、広葉樹と針葉樹では、休眠芽・潜伏芽のあるなし、数の多さに大きな差があることは間違いありません。

 薪炭林の様に広葉樹の樹木を伐採した後に、地際から芽がたくさん吹いてきますが、これは潜伏芽が不定芽として出てきた結果なのですが、スギの場合はこの潜伏芽がほとんどないため、スギを伐採した後に芽がまったく出てこないのはそのためです。だから、スギの人口林で木材を採った後にまた植林を行うのは、そのまま放置しておいても林は再生されず治山上の問題があるからといってよいと思います。

 以上の見解は、アマチュアの天杉太郎がいろいろ勉強した結果で、どこかの論文にきちっと報告されている記述ではありません。
 もし、樹木の専門家の方で明確にご説明頂けるのであれば、ぜひブログコメントに投稿お願いできたらと思います。

 そうなると、今回のブログの冒頭で見て頂いた「スギのぼうぼう萌芽」は、最初からの不定芽で、スギはこうした萌芽(=胴吹き)を非常に出やすく、この萌芽枝が今後のブログでご紹介する伏条更新によって自らのクローンを作って固体を維持して行くとなりそうです。
この結果は、「スギ巨木物語」 平英彰著 の伏条更新の記述と合致します。


 洞爺湖サミットで有名な天野氏の佐渡の「金剛杉」は、主幹を人に伐られたスギの生き抜くために生き続けるために伸ばしたスギ萌芽枝の写真なのです。

 次回からはいよいよ「更新」をテーマにお送りします。乞うご期待!
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コメント

杉の休眠芽は、どんなタイミングで目覚めるのでしょうか。
仮に大枝が折れたりしたら、それを補う光合成のために、
たくさん枝葉を出すのでしょうが、写真の萌芽は、
光も当たらなそうな低い位置でたくさん出ていますね。

萌芽を出す目的は、光合成ではなくクローンを作るため
なのでしょうか。次回の更新を楽しみにしています。

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