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コラム(20) : ヨドの森

 みなさん、こんにちは。天杉太郎です。

 さて今回は、コラムとしてお送りします。先日、高校時代からお世話になっている下越山岳会の創立80周年記念事業として会報「飯豊 7号」が発刊されました。今回はそこに寄稿させてもらった「裏五頭・三階滝沢・ヨドの森」をご紹介したいと思います。天杉太郎がなぜ天然スギに見せられて行ったか。そんなお話です。それでは、読んでみてください。



 『裏五頭・三階滝沢・ヨドの森』

 五頭連峰の東面、三階滝沢の山懐には今まで世に紹介されたことのない不思議な森がある。 「ヨドの森」と言う天然スギの森である。
 今から30年以上前、馬ノ髪山・釜ヶ沢を夢中になって登っていた。その後真冬2月に山岳会の人たちと馬ノ髪山に登り、雪崩の巣・釜ヶ沢の中に自生する天然のスギの姿を見た。強烈な印象だった。この話を聞いた元会長・五十嵐さんが見せて下さったのが「飯豊山塊・天然スギ分布図」であり、「面白い、もっと調べてみなさい」とアドバイスしてくださった。これが私の天然スギとの関りの始まりだった。
 「ヨドの森」は、五頭連峰の東面、中ノ沢集落の奥を流れる三階滝沢と支流・ヨドヶ沢の出合いにある。
 実は10年以上前から、縁あって中ノ沢渓谷森林公園に通うようになり、中ノ沢集落の長老・神田幸一さんが、天然スギに興味を持つ私を「面白い天スギ」があると案内して下さった。
 「ヨドの森」では、尾根の末端が沢近くで段丘状になっている地形の急峻な崖っぷちに天然スギが並んで自生している。森の内部はブナ林となっており天然スギは切り株を含めても見当たらない。
 驚くことは、この自生する天然スギの一本一本が三川村の「将軍杉」にも負けない風格を持っているのである。それは、決して巨木だから、奇妙な樹形だからではない。天然スギの生命力、生きる力を感じるからである。樹齢数百年か千年か、今、目の前で生きている天スギ巨木。敬い畏敬の念を抱かずにはいられない。
 なぜこの様な立派な天然スギが崖っぷちにだけ自生するのか。これはスギの実生にある。スギの種は小さく、森の内部ブナ林の中では落ち葉に埋もれ実生できない。崖っぷちでは降雨・降雪による地面の撹乱が起き易く、こうした場所にのみスギの実生が可能となる。しかし、生まれ出たは良いが、崖っぷちに豪雪、この後大変な試練が彼らを待っていた。その試練を乗り越えて来た姿があの樹形となっているのである。
 この「ヨドの森」で、2011年11月26日そうそうたるメンバーで天然スギの調査が行われた。崖っぷちの天然スギ、山岳会の笹川さんにお願いして岩登りではないが、ザイルによるビレイや登攀指導をお願いした。この調査で、天然スギ一本一本のあり様が明らかになったと共にとんでもない事実が見つかった。「根上がり木」と言う大昔の伐採痕が見つかったのである。このことは、数百年なのか一千年単位なのか年代の特定はこれからにして、大昔から「ヨドの森」の天然スギは人との関りを持っていたことを意味する。この伐採痕の発見により「ヨドの森」は新たな展開を迎えている。

 日本各地に「あがりこ」と呼ばれる伝統的な樹木の利用形態の中から生まれた樹形がある。調査を進めるにつれ「ヨドの森」を初めとする三川の天然スギが、この「あがりこ型樹形」である可能性が高まってきている。こうなると「ヨドの森」の天然スギは、自然と人との関りを物語る歴史的文化遺物と呼べるようになるかもしれない。
 昔の越後の岳人は、人を主体においた山登りではなく、もっともっと自然を敬い、その中での人と自然との関りを大事にして来た。
 最近好きな言葉がある。「山に生かされた日々」。奥三面集落のダム湖に沈む前の記録集の表題である。「ヨドの森」の天然スギは、我々にその自らの姿・樹形をもって大事なことを語ってくれているのである。 

 次回はまた「笠菅山・天スギツアー」をお送りします。乞うご期待!
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コメント

山に登る人、写真を撮る人、樹木を育て利用する人、
山菜やキノコをとる人、魚を釣る人、雪遊びをする人…

同じ山でも、視点が違うと価値が違ってきますね。面白い。

ヨドの森は今までの観点では、世に紹介されるものでは
なかったが、天スギに注目すると価値のある
森だということ。
この観点に気付くことができて、本当に良かったですね。



新たな観点

兎吉朗さん、いつもありがとうございます。
新たな観点、人まねでない観点。
「天然スギ」をテーマに自然を見つめ、自然と人とのかかわりを考える。
本当に良い観点だと思います。

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