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笠菅山・天スギツアー その4

 みなさん、こんにちは。天杉太郎です。
 今回は、笠菅山・天杉ツアー その4としてお送りします。が、最近の天杉調査に一石を投じる新たな文献が入手できましたので、最初にご紹介しておきたいと思います。

    ブログ15-19      雪国の林業と森林の物語

 「雪国の林業(やま)と森林(もり)の物語」です。元新潟県林業技術職員であった池嶋司氏が2007年に自費出版された本です。天杉調査になくてはならない大事なメンバー・竹内さんから先日頂いたものです。

 332Pに渡る大作なのですが、最も注目すべき点は「株スギの択伐林」についての記述です。「株スギ」を「天然スギに由来するもので立条、萌芽による株立ち性のもの、伏条、萌芽による群状性のもの」と定義され、豪雪地域の自然条件にもっとも適したスギであり、これを利用した「株スギの択伐林」を最も古い人口造林の形態のひとつではないかと考えられ、かつ極めて省力的、利雪的、保続的で全国に誇れる林業技術と評価されていることです。

 詳しいことはブログで特集としてご紹介したいと思いますが、豪雪地域と言う厳しい環境の中で生き抜く天然スギの生態をうまく利用し、自然との共生という意味で最も理にかなった姿であり、天スギと人との関わりを知る大事な視点となるものであると考えています。この11月予定している京都・北山の台杉仕立て、芦生スギの伏条台杉調査ともつながる、これから最も大事なテーマとなるものです。
 それにしても「天然スギ」は本当に奥が深いですね。

 それでは、本題の「笠菅山・天スギツアー」を始めましょう。
 先々回ご紹介した「赤いスギ」を過ぎると、44番鉄塔に出ます。ここには天然スギの伐採痕があり、笠菅山周辺の天然スギの樹齢特定のための大変貴重な証拠となります。次の写真を見てください。

    ブログ15-20    天スギの年輪

 短径40cm長径60cmの切り株で、年輪数120~140と考えられます。土地条件の差、合体などによる肥大成長もあるので一概には言えませんが、この周辺では直径1m程度の天スギで樹齢200~300年くらいではないでしょうか。これからも切り株、大枝などからの樹齢情報を積み重ねて行きたいと思います。
 さてさらに登りましょう。面白い天スギ群が出てきます。次の写真を見てください。

    ブログ15-21

 解説の前に、以前「樹木の基礎講座」でご紹介した以下ふたつのイラストを見てください。

    伏条更新    伏条更新-2    伏条更新

 そうですね。写真の天スギ群は「伏条更新」によるものです。
 次の写真を見てください。

    ブログ15-22    伏条更新の根元部分

 天スギそれぞれの根元部分をよく観察すると写真のようにつながっているのです。写真すべてのスギが同じ固体かは断定できませんが、大半は同じ個体と思われます。次の写真も見てください。

    ブログ15-23    立条と伏条による株立ち

 根元から高さ1m程度のところが膨れていますが、これは立条と伏条による株立ちで年毎に根元部分が合体し、かつ肥大成長したものと思われます。

 冒頭でご紹介した「雪国の林業と森林の物語」の中では、貴重な写真入りで萌芽・立条・伏条更新の様子が簡潔な解説文と共に掲載されており、非常に良い勉強になります。もし池嶋氏のお会いすることができ、ご了解頂ければ、ブログ特集の中でもご紹介できるかもしれません。

 今回は、もうふたつ程天スギの事例をご紹介しましょう。次は根曲がりです。

    ブログ15-24    根曲がり

 写真を見てください。実はこの天スギを最初見たときは、良く曲がった天スギだなあ。としか思わなかったのですが、根元部分をよく観察すると。あれ、あれ、あれ!と次写真。

    ブログ15-25    J曲がり

 実は根元はうんと上部にあったのです。まさに「J」スギです。この傾斜地で180度向きを反転させるときの「あて材」形成はいったいどうなっているのでしょう。内部には相当な応力が溜まっていることでしょう。昔の人達はこれはこれで形状記憶合金ではありませんが、それなりの用途を知っていたのでしょう。

 最後に、次の写真を見てください。

    ブログ15-26

 そうです。先々回もご紹介した「剥ぎ取り木」です。
 黄色い矢印のあるところ、内部の辺材部分が平らに切り取られています。そして、この剥ぎ取られた傷を癒すべく周囲が肥大成長し、樹皮で覆い隠そうとしています。
 しかし、天スギにとっては災難ですが、採る方としてはある意味合法的に大事な材を調達する賢い方法と言えるでしょうか。笠菅山の天スギは、株スギの択伐や剥ぎ取り木など、綱木・会津街道と言った昔の交通の要所に近く、天然スギと地域の人達との関わりが非常に強かったのではないかと推測されます。

 次回は笠菅山のハイライトのひとつ、台杉について見てみましょう。天スギの生き様、人との関りを知ることができる貴重な天スギをご紹介します。合わせて言葉の定義も加え、すこし頭の中を整理しながら天スギ・ツアーを進めたいと思います。

 乞うご期待!!
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コメント

昔の生活のなかでは、杉は人と深く関わってきたのですね。
剥ぎ取りの杉は、特に面白い。
伸び伸び育った杉を、人が剥ぎ取り、杉がその傷を修復し、
その姿をまた人が写真とって観察して。
生きている杉で人工物とは言えないものの、
人の歴史も感じられる、貴重な存在と思います。

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