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雪国の林業と森林の物語 その8

みなさん、こんにちは。天杉太郎です。
広島の大災害、心よりお見舞い申し上げます。
今年の夏は、梅雨=秋雨前線が日本列島にそのまま居座った形です。
日本は、地下プレートが沈む位置で地震、台風の通り道、前線が停滞する位置で大雨、災害列島と言うことになります。
こうした結果、韓国や中国・山東省では自然災害がほとんどありません。
ある意味、日本人はこうした環境に置かれて来たからこそ、自然に対する畏敬の念、自然崇拝。生き抜く逞しさ。生き抜く知恵・技術を身に着けて来たのかもしれません。

さて、今回も厳しい自然環境の中を生き抜いて来た天然スギの実情を、池嶋司氏著「雪国の林業と森林の物語」の掲載写真を通して見ていきましょう。掲載写真の紹介は今回で終わりとなります。
今回は株スギと択伐利用の現状に関する写真を11枚準備させてもらいました。
それでは順番に見て行きましょう。

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完成した株スギです。この後の肥大成長・合体、そして択伐。また、その上部からの萌芽・立条、そして択伐。こうした繰り返しの中で、天然スギの不思議な樹形「たっこ木」が形成されていく過程が見えてきます。


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根元からの萌芽・立条と伏条更新で成長した幹かを見分かることは難しいですが、親木からの距離で判断するで良いと思います。写真のスギは伏条による株スギと見えます。


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完成した株スギの択伐利用状況です。次の択伐が遅れたためか伐痕や根元部分①からの萌芽が見られません。しかし②の場所では伏条による後継樹が見られます。株スギでは継続的な択伐、それによる萌芽・立条、そして伏条による後継樹の育成が重要です。


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池嶋氏が言われていましたが、株スギでは継続的な択伐による株スギ林内の照度を上げることが最も重要。照度向上がなければ萌芽は起きません。


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説明文の通りなのですが、このまま肥大・合体していったものが「たっこ木」の原形になって行くのでは考えています。


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択伐が繰り返された株スギです。貴重な写真です。池嶋氏のお話では三本同時に択伐されることはない。この写真では右端の幹が基本となっている。とのことでした。石戸道の大株スギはこの事例と同じものと考えられます。写真の株スギの推定樹齢が100~150年とすると石戸道の大株スギは500~1000年となります。


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択伐が繰り返された株スギですが、このまま肥大・合体したと思われる天然スギが、笠菅山、石戸道の天スギ群に多く見られます。


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択伐による萌芽・立条が(矢印に)見られます。その後の萌芽が少ないですが、次の択伐により林内照度が上がれば、萌芽の発生・成長は格段に進みます。


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人工林であっても択伐がなされると萌芽・立条が発生し、後継樹が育ち始めます。植栽・人工林を基とした択伐造林。面白い発想だと思います。


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収量比率とは、「間伐の際に材木の密度を表す数値で、樹高と本数で測定され、立ち枯れする密度を1.0とし、生産目標によって0.6~0.8ほどの密度範囲で間伐に適用するのが一般的である。」と説明されています。植栽人工林では収量比率1以上と言うことは、全て立ち枯れしてしまうと言うことです。株スギでは根部が連結していることでこの密度でも枯れることはありません。スギ天然林の特徴は、①:萌芽・立条・伏条、②:肥大・癒合・合体、③:そして集中型(群れている)・根部の連結。と言えそうです。
特に③については、群れているからこそ一本(地立ち)より風雪害等に強く、根部が連結しているからこそ群れることができる。群れているスギ、これが「ムラスギ」と言う名称を持つスギの品種となっている。と言えそうです。
「ムラスギ」については、どこかで特集してみたいと思っています。


s-写真-45

この写真からはS50年ごろまでは択伐造林は行われていたと言うことになります。大中径木が見られます。
その後の一斉造林、皆伐の流れのなかで択伐林は衰退していきます。
池嶋氏はこうした経過を踏まえ、雪国人工林の将来の姿として、択伐造林を提唱されています。


以上で「雪国の林業と森林の物語」の掲載写真の紹介は終わりです。
一連の写真を見て来て、スギ天然林の実情、択伐利用の実態。そして、天然スギの不思議な樹形が生まれるきっかけ、樹形が形成される過程がイメージできる様になって来たと思います。まだイメージできない方は、繰り返し写真を見て頂けたらと思います。

加えてこうした択伐による樹形への影響を考える時、ひとつ大事な時期的ポイントがあると考えています。
それは、昭和30年前後の皆伐・一斉造林前と後です。適切な表現かどうかは分かりませんが、これ以前を第一世代、この後を第二世代と言っても良いかと思います。
一本の「たっこ木」を良く観察していると、第一世代部分と第二世代部分とで大きく変化している様に思われます。
第二世代以後今まであった「たっこ木」周辺が皆伐され、日照量が大幅に増え、その後「たっこ木」の萌芽・胴吹き・立条が急速に進んだ。そして、この第二世代で成長した幹が今現在で約50年。伐採可能な大きな幹に成長しています。
今、こうした仮説を証明する資料・データを集めています。

次回以後は、「雪国の林業と森林の物語」の本文から、株スギ択伐林の特質をご紹介したいと思います。
乞うご期待!!







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