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雪国の林業と森林の物語 その9

みなさん、こんにちは。天杉太郎です。

今回は池嶋司氏著「雪国の林業と森林の物語」の本文より、「株スギ択伐林の特質」についてご紹介します。
今回で池嶋氏の著書の紹介は終わりとなりますので、最後に天杉太郎の思いと池嶋氏への感謝の気持ちを綴ってみたいと思います。

池嶋氏は著書の中で「自然と歴史に学ぶ雪国の林業」「雪国的な造林方法」と題して「株スギ択伐林の特質」について書かれています。

池嶋氏はスギの造林方法として見たとき、株スギ択伐林を「在来型」、現在主流となっている造林を関西型として区別されています。
株スギ択伐林の「在来型」は最も古い人口造林の形態と考えられ、県内では江戸時代後期ごろから林地内での造林が始まったようである。
また多豪雪地帯では、造林と伐採、農林家経営の両面から皆伐よりも株スギの択伐林が有利なため株スギが林地造林の主体であったと推定される。と書かれています。

加えて、それ以前から天然スギを由来とするものに株スギ系と単木性地スギ系の二つの系統があった。
と書かれています。中ノ沢では、この株スギ系の変わった形の天然スギを「たっこ木」、単木性地スギ系の天然スギを「地立ち」と呼んでおり、天然スギでも二つの系統があったことが裏付けられます。

そして、株スギ択伐林の特質をまとめられており、要約すると以下の通りとなります。

1)台伐(高台場的)仕立
  株立・萌芽による台伐(高台場的)仕立の完成。株高1~3m、株立直径1.5m以上。

2)株立ごとの定期的伐採
  株立(群状を含む)毎の定期的法正林な伐採が可能。5~10年に一回ほど。

3)雪上伐採
  雪上伐採、雪上ソリ搬出に適している。

4)植栽不要
  立条・萌芽・伏条で後継樹を確保。

5)下刈不要
  択伐林で下草の繁茂が少なく(台伐仕立で株立高が1~3mとなるため)雑草木に埋没しない。

6)雪起不要
  上層木に保護され、台伐仕立のため株立高が1~3mとなるため積雪の影響を受けにくい。

7)冠雪害の軽減
  株立、群状全体の林冠で受け、分散させるため冠雪害はほとんど発生しない。

8)大風害の軽減
  株立、群状全体の林冠で受け、分散させるため大風被害はほとんど発生しない。

9)山火事回避
  県内山火事は地表火で、台伐仕立のため山火事被害は発生しない。

10)時間の重複利用
  株立群状の択伐林のため、根系が一体的に連結、時間の重複利用による後継樹の育成がなされる。

11)高密度立ち枯れ防止
  株立群状の択伐林のため、根系が一体的に連結、林木密度が高くとも立ち枯れが発生しない。

12)非株立ち木の株立ち化
  株立しない場合でも択伐による根元照度向上により、後継樹が萌芽成長する。

以上の様に極めて省力的、自然的、利雪的、保続的な性格がうかがえます。
池嶋氏はこの後、株スギ択伐林の造林方法について述べられていますが、今回はあくまでも天然スギの実態の紹介なので、詳細は別の機会にさせて頂きたいと思います。

今わたしの手元にはもう一冊の本があります。
「雪国の森林づくり」。豪雪地帯林業技術開発協議会が2000年に出された書籍です。

この中で、豪雪地帯での不成績造林地の問題点をとり上げ、どうすれば針葉樹人工林を確実に造成することができるか、雪国の本来の森林とはどのような森林なのか、今後どのように管理していくべきか、をまとめられたものです。

この本文の中では、「スギは積雪に一番適応力の高い樹種だといわれる。」
「雪害を受けたスギはさらに雪害を受けやすい樹形に奇形化し、雪害の繰り返しにより一層奇形化が進んだり、消失してしまうことがある。」等記述されています。

最後の終章「雪国の多様な森林施業」では、「雪との調和 –雪国の森林のあり方-」として以下の様にまとめ、締めくくられています。

多くの豪雪地帯における不成績造林地については、天然スギの分布様式のように、広葉樹とモザイク的に混交させ、択伐的な維持管理をしていきたい。このことが人工林と広葉樹とが共存した関係を保つことにつながる。

今後の雪国での森林づくりにおいては、「克雪から利雪」「画一性から多様性」「大面積から小面積」と言ったキーワードがあげられる。

「長期的視点に立って、現存する多様な資源を永続的に生かす」というのが、雪国での無理のない林業であり、かつ雪との調和性を図ることになるであろう。

ヨーロッパの林業に見習うなら「合自然的林業」ということになろうか。そのためには、天然に生育している樹種の種類や特徴・資源量などを十分理解する必要がある。

と述べられています。

久し振りにこの書籍を読み直してみて、ここで述べられている「雪国の森林づくり」は、池嶋氏が言われる「雪国的な造林方法」ととどのつまりは同じではないか。同じ結論なのではないか。
『自然に学べ!』 『天然スギに学べ!』 となる様に思えてなりません。
スギの生まれふるさとは雪国であり、雪に一番適応できる樹木なのですから。

わたしは「林学」を専門に学んだ者ではなく、「林業」に従事した者でもありません。
素人のたわごとと聞いて頂きたいのですが、思えば『雪を知っているか?』『スギを知っているか?』となりそうです。

雪の無い処の育林技術を豪雪地帯に持って来て実践、その結果雪害に悩まされ、苦悩の中で得られた結果は、「天然スギの分布様式のように、広葉樹とモザイク的に混交させ、択伐的な維持管理をし、人工林と広葉樹とが共存した関係を保つこと。」とまとめられています。

雪国での無理のない造林、雪との調和を図る合自然的林業。

もともとスギの生まれ故郷は雪国。豪雪の中でも生き抜ける力・術を持っている。
昔の人達はこのことを良く知っていました。

過酷な自然環境の中でたくましく生き抜く姿を見て来たからこそ、自然のスギを自然の理にかなった方法で利用し、自然との共生を続けてこれたと思うのです。

失礼を承知であえて言わせて頂ければ、スギを育てようとしながら、誰もスギ本来の姿を知らないのです。
今我々が目にし対峙できる天然スギは、自らのその姿をもって多くのことを語ってくれているのです。



        (裏五頭山系の株スギ)

        在来型-1    屋敷岳の株スギ



        在来型-2    石戸道の大株スギ



        在来型-3    笠菅山の株スギ




池嶋氏の著書「雪国の林業と森林の物語」との出会い、そして何よりも池嶋氏ご本人との出会いは大きなものでした。

雪国の天然スギの実態を長い年月をかけここまで克明に調査、記録として残されたのものは他にはないと思っています。

とかくスギ巨木へと目が行き注目されるなかで、スギ天然林の幼樹からの実態が記録されており、雪国特有の株スギの実態をそしてその株スギを択伐利用すると言うスギと人との関わり合いの実態をもまとめて来られたのです。

著書の紹介は今回で終了とさせて頂きますが、近いうちには天然スギ樹形に関する分類方法を池嶋氏と共に検討・考案し、ブログ上で提案したいと考えています。

最後に、著書のブログ紹介をこころよくご承諾頂き、また株スギにつきまして多くのお話・助言を頂きました池嶋司氏にこの場をお借りして心より感謝申し上げます。

ありがとうございました。



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